土壁の家の印象を聞くと、特に年配の方に「土壁の家は寒い」と答えられる方がいます。
屋根や床にも断熱材が充填されていない、建物の気密性能など他の要因もありますが、確かに土壁単体では、断熱性能は低いと言えます。
断熱性能を評価する際、熱伝導率(数値が低いほど高性能)を用います。
建物の断熱性能を求めるときに用いる熱伝導率は、土壁の場合0.69(W/mK)です。
一般に用いる断熱材のひとつ、高性能グラスウール14Kは0.038(W/mK)と、土壁の約18倍の性能があります。
そのため、断熱性能を担保するよう、土壁と外壁との間に断熱材を充填します(※1)。
断熱材を入れるなら、わざわざ土壁を採用しなくても…との意見も聞こえますが、それでも
土壁を提案する理由のひとつに、土壁が持つ「調湿性能」と「熱容量の大きさ」を生かした住まいを提供したいと考えているからです。
(こちらは、後のコラムでふれます)
土・職人の確保の難しさや、施工中の天候に応じて、養生をする労力がかかること、土壁乾燥期間が必要で、乾式工法に比べて工期が長くなりますが、以前からある技・知恵・素材に、現代の技術・性能を付け加え、心地よく暮らせる住まいを提供したいと考えます。
(※1)
2025年から省エネ基準が義務化されます。
全国で8つに分けられた地域区分のうち、浜松市近郊は地域区分6にあたります。
その中で、断熱等級5(ZEH基準)を満たすよう、建物全体で計画します。
さらに断熱性能を高めることも可能ですが、コストアップになります。
その費用を土壁や造り付け家具、外構・植栽に充てたり、間取りを工夫して、心地よい暮らしをおくる選択をしても良いのではないでしょうか。
[山下]