建築基準法で定められた内容を確実に実現させる

建築基準法は年々その内容がレベルアップしてきています。とくに構造性能については、いわゆる新耐震基準が1981年に出され、阪神淡路大震災でもその耐震基準に沿った建物の倒壊は非常に少なかったことが知られています。また2000年にも構造性能についての大改訂が行われ、さらに合理的な基準となっています。建築基準法は「阪神淡路大震災級の地震が来ても倒壊・崩壊しない。500年に一度程度発生する暴風が来ても倒壊・崩壊しない」という目標でつくられており、当然、これを守ることは我々つくり手の最低限の責任です。
ただし、「建築基準法を破らない」ということと「建築基準法の主旨を理解して建てる」ということは別の話です。どんな法律にも逃げ道はあり、建築基準法の主旨を理解してそれを実現しなければ、目標とする構造性能は担保できません。
番匠では、建築基準法の主旨をきちんと理解しながら、まずは大きな地震や台風が来ても倒壊しないような構造性能を実現させる設計と施工を行うことを基本としています。具体的には、「耐力壁の量」「耐力壁の配置(耐力壁のバランス)」「接合部」「基礎(及び地盤)」について、まずは設計上で、次に施工時にきちんとしたチェックを行っています。

バランスの取れた家の形は構造の安定に欠かせないものです。


構造を理解した大工の手刻みにより、細かいところにまで配慮された骨組みがつくられます。

強固な基礎をつくる

番匠は強固な基礎をつくることに強いこだわりをもっています。
いくら骨組みを頑丈にしても、基礎の強度や耐久性が不十分であれば、地震に強い建物にはならないからです。地盤の固さをできる限り正確に把握し、その内容によっては地盤改良を行い、強度が担保された地盤の上に不同沈下しにくいベタ基礎をつくります。さらにコンクリートの配合にも十分な配慮を行うことで、頑丈で耐久性の高い基礎をつくり上げています。

一般的に行われている地盤調査よりも正確に地盤の様子がわかるボーリング調査などを行い、不同沈下やシロアリに強いベタ基礎を採用。コンクリートの強度と品質にこだわっています。

床を固め、水平剛性を取る

建築基準法レベルの構造性能をさらに向上させようとしたとき、大きなポイントになるのが「水平剛性」です。この水平剛性は地震や風の力をうまく建物全体に伝え、建物全体で支えるようにす
るには不可欠な性能です。具体的には面状になっている材料を床に張り、床を“固める”ことで水平剛性が高まります。
もし水平剛性が低ければ、地震や風の力が建物全体にうまく伝わらず、少ない箇所に力が集中してそこが壊れ、倒壊・崩壊につながる恐れが出てきます。建築基準法よりもさらに高いレベルの性能を目指そうとしてつくられた「住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」の性能表示制度においても、この水平剛性についての基準が盛り込まれています。
番匠では、「建物全体で地震力や風圧に耐える」という、構造性能におけるもっとも基本的な“理”を考え、水平剛性を高めるようにしています。

梁のピッチを細かくし、床パネルの4辺すべてに釘が打てる骨組みにしています。釘による接合部が多いほど、床の変形が抑えられるからです。

床が固められた実際の建物。面状になった床パネルを張っています。

地震や風の力をうまく受け止められる、粘りのある構造体をつくる

ここ数年、わが国の伝統的な構法の良さが見直され、伝統的な構法を科学的に分析する研究が進んできています。先に建築基準法のレベルアップについて述べましたが、そこには伝統的な構法が持つ大きな特長である「粘り」という要素が含まれておらず、これをあらためて評価しようという流れが生まれてきたためです。だからといって、伝統的な構法のすべてが良いというわけではありません。もしそうであるなら、過去の地震や台風による大災害は起こらなかったでしょう。
いまの多くの木造住宅は「筋かい」によって耐力壁をつくり、金物に頼った接合部になっています。筋かいも金物も確かに「強い構造体」をつくるには適しており、地震や風の最初の力を受け止めるためには有効なものです。ただ、筋かいはその端部が壊れてしまうと、その後はまったく力を受け止められず、建物を支えることができなくなってしまいます。柱と梁をつなぐことに使われる金物も、それに頼るだけではなく、「もし金物が効かなくなったら」という発想で臨むことが重要です。
最近になって面状の材料(構造用合板など)で耐震壁をつくる住宅が増えてきました。これは、「強い」と「粘る」を両方とも実現できるからです。面状の材料に打たれたたくさんの釘が「粘り」の元となるわけです。この面状の材料を使うという発想は伝統的な住宅における「貫」の役割と同じものです。
一方、プレカットの普及によって「ほぞ」と呼ばれるものが短くなってきています。「ほぞ」は金物が大きな力を受けて効かなくなったとき、柱と横架材とを最後につなぎとめてくれる重要なものです。
番匠では、「強い構造体」をつくるととともに、「粘りのある、しなやかな構造体」もあわせて実現します。具体的には、面状になった材料(構造用合板など)で耐力壁をつくり、大工の手技によって長ほぞをつくります。また、通し柱は寸法の大きいものを使いますが、それは地震によって柱が折れるのは断面欠損が大きなところだということが明らかになっているからです。伝統的な住宅の大黒柱の意味がそこにあるわけです。
このように、番匠は構造性能の“理”を考え、伝統的な住宅の良さと現代の技術を柔軟に取り入れるようにしています。

土壁の中は貫と呼ばれる構造フレームになっています。これは建物がある程度変形しても倒壊を防ぐ働きをします。



伝統的な「長ほぞ」もやはり建物の倒壊を防ぐ働きをします。大工の手刻みが大きく生かされる部分のひとつです。

貫構法

① 大垂木+桁+柱の緊結
深い軒の出は建物を風雨から守る。大風にあおられて飛ばないよう、垂木は桁・柱にしっかり固定する。


② 追っ掛け大栓継ぎ
桁や梁など横架材を横に繋ぐ、曲げ・引っ張りの強度に優れた継手。2つの部材の中程に、斜めにすべりをとるのが大切。


③ 厚貫(30mm)
柱と柱を水平に繋ぐ厚い貫。たくさんの接合部が、外から受ける揺れの力を吸収する。通し柱など二方向から貫が通る部分では、楔の位置をずらして、内部でぶつからないようにする。

④ 長ホゾ+込み栓
部材同士をT字に接合する仕口は、ホゾを長くして込み栓で止めると抜けにくい。

面剛性
床面を固めることで、横から掛かる力に対して建物の変形を抑えることができる。床パネルの四辺が固定されるように梁に敷き、その上に床板を張る。

 
PAGE TOP